操作的定義

操作的定義は、操作主義という考えに基づいて生まれた考え方なので、先に操作主義について説明します。

なお、看護の論文で用いられる”操作的定義”は、単なる”本論文で用いる定義”ぐらいの意味であることが多く、本来の操作的定義とは思えない使われ方をしています。

操作主義とは

操作主義とは、観察によって直接確認することができない概念を、操作(観測)によって定義する方法論である。

例えば、「電圧」や「電流」という概念は、それをどのように測定するかという方法を通して定義されている。「電圧」は、直接目に見える概念ではないので、目に見えるように測定することによって確かに存在していることが確認される。このように目に見えない概念を測定という操作によって存在すると考えるのが操作主義。詳しくは科学哲学の本を読んでください。

心理学では

「知能」そのものは直接測定することができない。そこで、「知能が高い」ということを「文章を読み書きできる」「正確な記憶ができる」という測定可能な行動によって測定しようとする。

「知能」そのものは理論的構成概念と呼ばれ直接測定できないが、行動は観察し測定することができる。この理論的構成概念を測定可能な行動に置き換えて定義することを操作的的定義という。たとえば「知能が高いとは、文章の読み書き、正確な記憶ができることとする」が操作的定義になる。

直接測定できないものを測定可能なもので置き換えて測定するためにあるのが操作的定義なので、単に「○○を△△と定義する」とあっても、△△がより測定しやすいものになっていなければ尺度開発の操作的定義とはいえないと思う。

哲学では

以下の本には次のように書かれている。

『操作的定義とは、たとえば「性格が外交的」だとか「上流階級」だとかいった、そのままではとらえどころのない概念を、「この性格テストで何点以上をとる人」とか「所得がいくら以上の人」とかといった、調査して確かめられる内容で定義することである。』

雑記

「私は内気な方だと思う」という質問文は観察可能な行動を測定しているとは思いにくいが、心理学ではこういう質問に「そう思う」と回答することも行動である。とすると、「不安」の操作的定義は、「不安とは、?や?や?という感情を持っていると自覚すること」なのかな?

設問への回答が真実とは限らない

「 精神科医が「分裂病質」と考えた質問に対して「はい」と回答したのは、正常者で最も多く、統合失調症や躁うつ病の患者では少なかった。」

「よく白昼夢にふけります」という設問に対して、正常者の43%がはいと回答したが、統合失調症患者は31%、躁うつ病患者は25%であったらしい。同じく「他人に批判的です」「決心するのは難しい」「いつも自分の考えで頭が一杯です」に関しても正常者の方が点数が高かった。精神障害者は自分の異常性に気付きにくいということが現れている。