妥当性

本当に測定したいものが測定されているかが妥当性です。

たとえば不安の質問紙尺度を新たに開発した場合、その尺度が本当に不安を測定できているのか、もしかしたら不安とは違う恐怖という概念ではないかなどという議論が妥当性に関する議論です。

多くの心理尺度は、本来目に見えない概念を測定しているので本当に測定できているかを説明するためにいくつかの考え方があります。

理論的構成概念と操作的定義の関係

この目に見えない概念と測定の関係を考えるためには、理論的構成概念と操作的定義の違いについて 渡邊芳之(1996). 心理学測定と構成概念. 北海道医療大学看護福祉学部紀要.3.125-132. (pdf) を参照してください。

要約:理論的構成概念そのものは測定できない。よって、理論的構成概念から生じる行動を測定する。この理論的構成概念→行動の関係は正確なほどよい。つまり、この構成概念でしか説明できない行動(他の構成概念では説明できない行動)を特異的にもれなく集め、それを測定する必要がある。妥当性を高くするには、理論的構成概念と行動の関係が正確である必要がある。

妥当性の種類

「いくつかの妥当性が述べられてきたが、すべては構成概念妥当性であるという考え方が主流になってきている。」

「かつて、APA(1954, 1966, 1974)などでは、基準連関妥当性,内容的妥当性,構成概念妥当性を妥当性の3つのタイプとして記述していたが、3つの妥当性をただ形式的に Stamp Collectingすればよいという風潮 (Landy, 1986)があるとの批判が出てきた。 その後、構成概念妥当性は妥当性の下位概念でなく“妥当性そのもの”であり、妥当性は単一の概念(unitary concept)とされた。」

構成概念妥当性

妥当性が高い尺度では、理論的構成概念が測定可能な複数の行動で説明できる必要があります。これを構成概念妥当性と呼びます。具体的には尺度を因子分析して、理論的構成概念→行動と同じような関係がみられることが望ましいといえます。

基準関連妥当性

新たに開発した尺度がこれまでにある似たような尺度と相関が高いという考えで妥当性を評価する方法です。これを基準関連妥当性と呼びます。ただし、すでに似たような尺度が存在していなければ使えません。たとえば、「職業満足度」と「離職願望」には負の相関があるに違いない。これが高ければ基準関連妥当性が高いと考えるのです。

しかし、この2つがぴったり一致する保証はありません。働かないと食べていけないなどの理由で、職業満足度は低くても離職しようと思わない人がいても構わないからです。ですから、この2つの尺度にどのぐらい相関があればよいのかについてははっきりしたことはいえません。

内容的妥当性

問題や質問の内容が測定したい領域を反映しているか。領域の範囲内から選ばれているか 、領域から偏りなく選ばれているかという基準。

妥当性の確認方法

概念内の構成概念妥当性は、因子分析を行い、それぞれの因子得点の相関が高い・低いで、収束的妥当性、弁別的妥当性を述べることができます。

また、新しくデータを入手して既存の分析が正しいか調べる方法や、既存のデータを2つに分割して妥当性を検証する方法(交差妥当化)もあります。

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